「空母進水」目前の中国軍が抱く強気と弱気

執筆者:藤田洋毅2007年1月号

本誌先月号既報のように、いよいよ中国が初の空母を配備する。強化される機動力の一方で、マンパワーには歪みも。「二〇一六年、わが国は文字通りアジアの龍として羽ばたくのです」 中国軍の若手中堅幹部は力強く明言した。北京の海軍総司令部はすでに「航母(航空母艦)部」と呼ぶ新たな部署を設け、機動部隊創設に向け着々と動いている。一番艦となる旧ソ連の退役空母「ワリヤーグ」(六万トン級)は、〇七年五月をメドに全面改修を終え、南海艦隊(司令部・広東省湛江)に配備する。海南省三亜市の亜龍湾では母港となる専用埠頭が建設中だ。 さらに、いずれも四万トン級の空母二隻を中国国内で建艦し配備する計画で、二番艦は上海の滬東造船所で建造中。先の若手幹部は、「三番艦建造にも近く着手する。空母三隻運用体制は、ちょうど十年後の一六年に完成する計画だ」と語った。現在は高級ホテルが立ち並ぶリゾート地として有名な亜龍湾だが、いずれは「亜細亜龍(アジアの龍)」を意味する「亜龍」になりそうだ。 スクラップ同然とされたワリヤーグは、一九九八年、中国系香港企業が「マカオに運び洋上カジノホテルにする」と称して旧ソ連・ウクライナから総額三千万ドルで購入。その後、中国に所有権が移り、〇二年からは遼寧省大連の造船所で改修が続いていた。引き渡し当時、ウクライナは主動力を含む機関系をはじめ主な設備・電子装備は再利用できないと主張していたが、実は「完全には撤去されておらず、パイプやコードを切断しただけの箇所も。修復が前提になっていたから、決定的な障害はなかった」と中国の軍関係者はいう。〇五年暮れ、船体を海軍正規艦と同系色に塗り替えたのが確認され、就役間近との観測が強まっていた。艦名は一説には「北京」となるというが、まだ不明だ。

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