「角福戦争」は福田が勝った

執筆者:2007年1月号

 田中角栄と福田赳夫の「角福戦争」。実はいまも続いているのではないか。自民党と民主党の主だった顔ぶれをみてふとそう思った。民主党にはかつての田中派系統の政治家として、小沢一郎、羽田孜、渡部恒三、岡田克也、鳩山由紀夫らがいる。自民党の主流は、安倍晋三、小泉純一郎、森喜朗、中川秀直と福田系列の政治家の名が並んでいる。自民党を二分した角福戦争は、いまや二大政党に分かれての戦いになっているのだ。 戦後政治史の中で特筆すべき激しい派閥抗争は国の姿まで変えるほどすさまじいものであった。第一次角福戦争は田中系列の圧勝である。田中角栄―竹下登―小渕恵三―橋本龍太郎と続いたところまでは間違いなく田中の勝利であり、福田系列の勢力は絶滅しそうな情勢であった。 福田系列の逆転は、六年近く前、小泉純一郎が総裁選に出馬したある瞬間から始まった。橋本派(いまは津島派になっている)は総裁選に当時の実力者、野中広務を擁立しようとしていた。反対もあったが野中が最有力候補であることに変わりはなかった。そのころ出馬への意欲を示した小泉のところへ、橋本派から非公式に一つの提案があった。「野中首相―小泉官房長官でどうか」という内容であった。小泉は断る。

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