「お金儲けは悪いことですか」――。ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で躓いたファンドマネージャー、村上世彰氏は逮捕直前の会見でこう嘯いてみせた。この言葉に反感を抱いた日本人は少なくない。が、日本から一歩外に踏み出せば、金儲けのためには多少のことなどものとも思わない華僑たちが経済を握る“拝金主義”の世界が広がっている。本著『華僑烈々』はこの厳しいアジアの現実を知るための格好の材料を提供してくれており、この中に、日本がアジアで生き抜くためのヒントが込められている。 著者は愛知県立大学教授で、日本では数少ない華僑・華人研究の第一人者。長年香港やバンコクに住み、華僑の要人たちと接しながら、彼らの思考や金銭感覚などを肌身で感じとり、研究を続けてきた。本著では、この経験を生かし、香港や台湾の大物経済人、東南アジア諸国で活躍する華僑、躍進目覚しい中国の企業家、さらには、アフリカにまで進出した華僑たちを紹介。彼らの凄まじいビジネスの現状、成功までの道のり、中国との関係などをわかりやすくレポートしており、しかも肩のこらないちょっとした読物にもなっている。 中国は一九七〇年代末から始まった改革・開放政策によって経済を急速に発展させ、アジアの盟主としての地位を一段と固めつつある。この中で、アジアにおいて中国のライバル的な存在である日本は東南アジアの重要性にようやく気付き始めた観がある。だが、東南アジア研究はこれまで日本において軽んじられてきた結果、新聞報道などで現地の実情が日本に正確に伝えられてきたとは言い難い。

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