ボランティア・コンサート

執筆者:髙本眞一2015年1月10日

 私は、音楽とは生きる喜びであり、ときには、生きる悲しみにつながっているのだと感じています。人間はうれしいときにも、悲しいときにも歌を歌います。生きることと音楽は切っても切れない関係にあるのです。健康な人の心も揺らす音楽ですから、病を得た患者さんの心には、よけい響くことは容易に想像できます。患者さんには、音楽は天使が奏でる調べに聞こえるのではないでしょうか。三井記念病院では患者さんの為に一月に一度ボランティア・コンサートが開かれています。

 ボランティア・コンサートを聴きに来られる患者さんの中には手術待ちの方、手術が終わってほっとした方、内科の病気で手術はしないけど点滴治療を受けている方やそのご家族やお見舞いに来られた方などがおられます。車いすや移動用のベッドで来られる方もおられます。闘病生活の中で、ひと時でもほっとする時間を持ちたいと思われているのだろうと思います。

   がんの宣告を受けた方もおられます。人生の中でも比較的短時間のうちに非常に濃密な経験をした方たちの耳に聞こえてくるべートーベンやモーツアルトは、それまでに聞いていたのとはまた違った音色と雰囲気を醸し出すのでしょう。涙を流す方もおられます。そんなに大きくはない講堂ですので、演奏者にとっても1人1人の聴衆の顔つき、しぐさが手に取るようにわかります。演奏者もその涙を見て、音楽の力を感じながら、感激して益々興に乗って演奏ができるようです。音楽を通して、命と心の通い合いがあるように私は感じます。

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