霞が関と永田町が準備の遅れにほくそ笑んでいる。再延期の理由づけばかりが出回り、改革の仕上げを督励する声とてない。「システムの開発・整備の遅れを理由に、民営化は早晩、延期されるのではないか。生田(正治・日本郵政公社総裁)か西川(善文・日本郵政社長)か、どちらかの首を差し出せば世論も納得するだろう」 経済官庁のある幹部は、郵政民営化の停頓を嬉しげに予測した。 二〇〇七年十月一日の民営化まで、九カ月を残すばかり。民営化にともない、郵政公社が扱っている事業は、持ち株会社の日本郵政と四つの事業子会社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、郵便事業会社、郵便局自体を運営する窓口ネットワーク会社)に移管される。本来ならば今頃は分社化に向けた準備作業が佳境に入っているはずなのだが、霞が関の官僚たちの間では、にわかに民営化延期説が浮上している。その内実をさぐると、郵政民営化をめぐる“壮大なサボタージュ”が行なわれようとしていることが浮き彫りとなる。モラルの低さこそ深刻 民営化後の業務のためのシステム開発やその運用態勢の整備が遅れているのは事実だ。生田総裁ら郵政公社幹部は「部分的な遅れはあるが、ほとんど予定通り進んでいる」と必死にアピールするものの、新旧の所管官庁である金融庁や総務省の幹部は「職員の能力不足も含め、何から何まで不安だらけ。このままの状態で予定通り十月に民営化されれば、各社は発足直後から相次いでトラブルに見舞われ、我々は業務改善命令を連発しなくてはいけなくなるのではないか」と他人ごとのように冷ややかに見ている。

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