出口なきアフガニスタンの苦悩

執筆者:竹田いさみ2007年2月号

米ブッシュ政権にとって、出口が見えないのはイラクだけではない。介入からまる5年、アフガニスタンの混迷も極限まで深まっている。このままでは内戦に逆戻りする恐れもある。アフガン人の苦悩も募るばかりだ。 アフガニスタンに駐留する米英主導の多国籍軍「国際治安支援部隊」(ISAF)は、今年の十月十三日に撤退することになっている。米国が描いたロードマップによれば、アフガニスタン国内の治安はそれまでに十分に回復されており、だからこそ多国籍軍は十月に撤退できるはずであった。 ところが現実は、撤退どころか、多国籍軍への増派や駐留の長期化が真剣に検討されるなど、米国のシナリオは完全に破綻しつつある。昨年一年間に、アフガニスタンでは爆弾テロや軍事衝突で四千人が死亡し、負傷者は数万人に達した。多国籍軍の死者も二百人を数え、しかも犠牲者は確実に増加傾向にある。米兵ばかりでなく、英兵やカナダ兵の死者も報告されるようになった。 いま、内戦への逆戻りが懸念されるほど、アフガン情勢は深刻化している。多国籍軍に二千五百人の兵士を派遣するカナダでは、アフガニスタンからの「出口戦略」を真剣に検討すべきだとの声も強まる。 二〇〇三年のイラク戦争勃発後、世界からの注目度が低下したアフガニスタンでは、イスラム過激派の旧支配勢力「タリバン」が復活しつつあり、アフガニスタン南部を中心に放火・略奪・襲撃・殺人・爆弾テロが頻発するようになった。タリバン勢力と地方軍閥との対立が激化し、さらにタリバンと米英両国が主導する多国籍軍との軍事衝突は、いまや日常茶飯事である。

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