ムガベ大統領の強権政治が続く南部アフリカのジンバブエで、国営紙が「中国政府から二十億ドル(約二千四百億円)の借款を得るために交渉する」と大々的に報道したところ、中国政府がこれを全面否定する騒ぎになった。両政府の徹底した秘密主義のため真相は藪の中だが、国際社会で「アフリカの独裁者を甘やかしている」との中国批判が高まっているのを受け、中国側が慌てて火消しに走ったとの見方が広がっている。 ジンバブエ国営紙『ヘラルド』は昨年十二月、北京駐在のムツァングワ大使の話として、政府が中国政府との間で二十億ドルの借款について交渉を始めると報じた。同紙は「中国側は既に担当チームを編成し、近くジンバブエの財務相や中央銀行総裁との交渉を始める」との大使の発言まで引用していた。 ところが報道の四日後、中国外務省報道官は定例記者会見で「そのような事実は絶対にない」と全面否定。十二月三十一日に始まった李肇星外相のアフリカ七カ国訪問にジンバブエが含まれていないことも強調した。ジンバブエ側はその後、ピタリと借款の話をしなくなった。 ジンバブエ経済はインフレ率一〇〇〇%、失業率八〇%と壊滅状態。欧米諸国とは断絶状態の一方で、中国からは軍用機を購入するなど関係を深めている。中国側もジンバブエのウラン、プラチナなどに注目して投資を進めており、巨額の借款供与で経済安定化に協力すれば中国の利益にもつながる。

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