時価総額十兆円の企業さえ呑みこまれるかもしれない。巨大化する一方の買収ファンドが内包する「真の危険性」とは何か。[ワシントン発]「近年まれに見る下手糞なディール」 米金融関係者の間でそう揶揄されたM&A(企業の合併・買収)がある。昨年三月、西海岸の地方新聞グループ、マクラッチーが総合メディアのナイトリッダーを買収した案件だ。マクラッチーの株価は買収後に急落。米国の代表的な株価指標、ダウ工業株三十種平均株価が昨年一年間で三十回以上も最高値を更新したにもかかわらず、マクラッチーの下落率(約二八%)は大型M&Aを手がけた米企業群の中で最大となり、あえなく「ワーストディール」という汚名に塗れてしまった。 ナイトリッダーは、米ブルームバーグと同じく市場ニュースを配信し、相場システムも販売している情報ベンダーだ。今回の失敗は、ナイトリッダー傘下の新聞社三十二社をまとめ買いしてしまった点につきる。未曾有の好景気に沸く米ウォール街でも、毎年一―二%ずつ販売部数を落とし、天下のニューヨークタイムズですらリストラに見舞われる新聞産業だけは「絶滅寸前の恐竜」扱いで、あえて手を出そうとするバンカーはいなかった。

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