トヨタ自動車のインド事業に苦難が続いている。 ひとつは乗用車販売の伸び悩みだ。昨年七月にホンダ系のホンダ・シエル・カーズ・インディアがライバル車「シビック」の新型を発売したところ、投入から四年近くが経つ「カローラ」(日本とは車種が異なる)の人気が急落。その結果、昨年十二月のトヨタ車(UV=多用途車=などを除く)の販売台数は前年同月比で二八%も下落した。一部地域の中古車市場でも「カローラ」の相場は二割ほど下がったとされる。 UVの販売は好調なため、トヨタの合弁現地法人トヨタ・キルロスカ・モーター全体では、昨年十二月の実績は前年同月比で一一%増。だが、この伸び率も、二〇―四〇%前後を記録した米ゼネラル・モーターズや韓国・現代自動車の現地法人、マルチ・ウドヨグ(スズキの子会社)、地場のタタ・モーターズなどと比べると見劣りする。 トヨタは、数が売れる小型車を投入すべく、第二工場の新設などに取り組んでいる。だが、すでに厳しい競争に飛び込んでも大きな利幅は得にくい。加えて生産力の増強にあたって懸念されているのが労使関係だ。 トヨタ・キルロスカでは労働争議はこれまで二度起きている。労組の全国組織の中には、効率性の高いトヨタの生産方式が従業員に厳しいと問題視して、生産ラインの構成や作業時間について詳細な情報を収集するところがある。「トヨタ中興の祖」とされる奥田碩相談役も、彼らに言わせると「フィリピン法人に在籍した時代に労組潰しで功のあった人物」となるから、対立の根は深い。

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