楽天・TBSの睨み合いに割って入った「第三の男」

執筆者:西山亀太郎2007年2月号

「この年末に楽天・TBS問題が動き出すかもしれない」。初冬から一部に流れていた情報の“正体”が判明した。TBSは楽天の保有株を買い取るため、自社株のTOB(公開買い付け)を準備していたのである。 だが、井上弘社長は十二月、「彼の登場でできなくなった」と悔しそうにこぼしたという。「彼」とは、靴チェーン店のABCマートを全国展開する三木正浩氏を指す。十一月三十日に提出された大量保有報告書で、三木氏が代表を務めるイーエム・プランニングがTBS株を五%超取得したことがわかった。「彼の登場」までTBSの株価は二六〇〇円前後。TBSが楽天の保有株(一九・〇九%)をすべて時価で買い戻しても一千億円程度で済む計算だった。ところが、イーエムの分まで買い取るとなると、さらに約二百五十億円が必要になる。敵か味方か。イーエムは戸惑うTBSに構わず買い増し、市場での思惑買いも加わって株価は急騰した。 急騰はTBSが進めた敵対的買収対策も一因だ。二〇〇五年春、村上ファンドに一%程度の株を取得されたと知ったTBSは、関連会社や取引先など友好的な株主に自社株を買ってもらう安定株主工作を開始。把握する安定株主比率は六割を超え、市場で売買される浮動株はわずか一〇%に減った。買収リスクは遠のいたかもしれないが、急騰しやすい構造になっていたTBSの株価は、「彼の登場」から一カ月間で四〇〇〇円を突破。自社株買いに必要な金額も高騰し、楽天との膠着状態に決着をつけようとしたTBSの計画は振り出しに戻った。

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