「日本経済を虚心坦懐に見通して、最善と考えられる判断を下していきたい」。暮れの十二月二十五日、都内で講演した日銀の福井俊彦総裁(一九五八年入行)は、次の利上げ時期について「虚心坦懐」を強調した。日銀は昨年三月に五年間続けた量的緩和政策から脱却。七月にはゼロ金利政策も解除したものの、引き上げた幅は〇・二五%という最低ラインにとどまっている。中央銀行の役割は景気動向に合わせた政策金利の上げ下げに尽きる。〇・二五%では「利下げ」の余地は実質的になく、日銀は“機能不全”のままだった。 だが、本誌が読者の手元に届く頃、日銀は「本来の中央銀行」に近づいているかもしれない。一月十七、十八日に、利上げの可否を決める日銀の金融政策決定会合が開かれるからだ。国内総生産(GDP)や消費者物価指数(CPI、生鮮食料品を除く)など、日銀が参考にする経済指標は強弱入り乱れている。追加利上げを決めても、あるいは見送っても不思議はない。「わざわざ『虚心坦懐』を強調したのは予防線ではないか」。冒頭の福井発言を、多くの関係者はそう解釈している。自民党の中川秀直幹事長は「(GDPが下方修正された原因は)日銀のゼロ金利と量的緩和の解除」と繰り返し、追加利上げを牽制。一月十四日の講演では、「(利上げが決定されれば)政府には(その先延ばしを求めることができる)議決延期請求権を行使する義務がある」と力説し、請求が認められない場合は日銀法再改正の検討まで示唆した。

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