EUの御旗の下に

執筆者:名越健郎2007年2月号

 1月からブルガリアとルーマニアが欧州連合(EU)に加盟し、EUは計27カ国、総人口が5億人に近づく巨大組織に膨れ上がった。しかし、世論調査では域内市民の過半数は拡大に恐れや不満を抱いているという。フランスやオランダが国民投票でEU憲法条約の批准を否決したのは、新規加盟国から大量の移民が職を求めて流入することへの不満があるためだ。 トルコの加盟見通しは立たず、バルカン諸国の加盟も凍結。ウクライナなど旧ソ連諸国は事実上拒否されるなど「拡大疲れ」がみられる。欧州統合が打ち止めとなる中で、伝統的な加盟国間の不和や官僚主義も増幅してきた。 EUには天国と地獄がある。 天国では―― コックはフランス人、警官は英国人、技術者はドイツ人、恋人はイタリア人、銀行家はスイス人。 地獄では―― コックは英国人、警官はスペイン人、技術者はフランス人、恋人はスイス人、銀行家はイタリア人。 EU内の規則とは―― ドイツでは、規則が作られる。 英国では、規則が守られる。 フランスでは、規則が歪曲される。 スペインでは、規則が破られる。 イタリアでは、規則が存在しない。 欧州委員会が黒と金の縞模様の稀少シマウマの発見に100万ユーロの懸賞金を出すと発表した。

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