北の「属国化」をもくろむ中国の準備と不安

執筆者:藤田洋毅2007年3月号

もはや北朝鮮との連帯意識はさっぱりと消えた。だが、南北統一などされたらかなわない――。さて中国は何を目指す?「時間稼ぎしているのは北だけでしょうか。ことここに到って、中国にとっても、時間はとても大切になりました」。中国国務院の幹部が、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議について漏らした。「表向き協議の前面に立つのは米朝。だが、いまや実際の主役は、北東アジアの近未来図をめぐってしのぎを削る中米です」と幹部は続け、「北は中国の完全な属国だと米国が認めるまで、問題は永遠に解決しない」と言い切った。「完全な属国」とは何か。幹部はいう。「中国が北の経済の生殺与奪の権を握り実質的に植民地化する。米国が中国の北経営について提案する権限は残すが、拒否権はもたせない。中国は可能な限り米国の希望に耳を傾けると約束するが、縛られない」状態を指すと。 周知のように、胡錦濤政権は古い重工業地帯である黒龍江・吉林・遼寧の東北三省(旧満州)の振興を重視し、投資を加速する姿勢を鮮明にしている。そこには「党中央の対半島・北戦略」と表裏一体の投資まで含まれているのだ。 たとえば、北を経済改革や対外開放へいざなうための、交通インフラの整備だ。一九九〇年代半ばから検討してきた「東北東部鉄道」建設が、いよいよ具体化する。黄海に面する大連港から遼寧省の中朝国境の街・丹東を経て、鴨緑江、図們江(朝鮮名は豆満江)という北との国境を流れる二本の川に沿うように走り、中露国境の黒龍江省綏芬河まで約千四百キロを結ぶ計画だ。昨年夏、吉林省延辺朝鮮族自治州から着工した。

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