介護施設や建設現場、深夜も稼働する工場や宅配便の仕分け作業……。普段の生活では接点の乏しい職場で、外国人労働者が確実に増えている。しかも彼らは「労働者」として日本に入国していない。今や留学生の存在なしでは成り立たくなった「新聞配達」も、そうした職種の1つである。

 午前4時――。静まり返った東京近郊の住宅街に原付スクーターのエンジン音が響いていた。気温は0度近くまで下がり、人通りは全くない。時たま巡回中のパトカーやタクシーとすれ違うくらいだ。

 スクーターのハンドルを握るベトナム人のタン君(20代)は2012年3月の来日以降、日本語学校に通いながら新聞配達を続けてきた。

「新聞配達は楽しいです。早起きもすぐに慣れました」

 タン君の仕事は午前2時に始まる。約350部の朝刊を配った後、午前中は日本語学校で授業を受け、午後から夕方にかけ夕刊を配達する。休みは週1日だけだ。

 来日当初は日本語の表札も読めず、配達先の特徴を図柄で記した「順路帳」が手放せなかった。しかし、現在の仕事ぶりは日本人と全く遜色ない。ヘルメットにマフラー、マスク姿で配達するタン君を見かけても、誰も外国人だとは気づかないだろう。

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