「台湾出身の華人作家」と呼ぶべき(享年90)(C)時事
「台湾出身の華人作家」と呼ぶべき(享年90)(C)時事

 陳舜臣という戦後日本で傑出した実績を残した大作家の死について、日本のメディアの報道は総じて浅かったし、薄かった。

 生涯に100冊以上の著書を残し、「江戸川乱歩賞」「直木賞」「大佛次郎賞」「吉川英治文学賞」「日本芸術院賞」など、ありとあらゆる文学関連賞を総なめにしたその実績からすれば、陳舜臣は国民的作家と呼ばれてもおかしくない。やはり日本人ではないからだろうか、あるいは、すでに病床に入って10年が経過して最近の文壇で存在感が薄かったせいだろうか。各社の文芸記者による評伝の書き方にも今ひとつ、迫力を感じなかった。付き合いのあった記者やライターたちがすでに第一線を退き、陳舜臣と直に語り合ったことがない人間が訃報や評伝を書かざるを得なかったことも響いたのかも知れない。

 逆に、報道ぶりはむしろ中国や台湾のほうが熱心で、かの地のメディアでは陳舜臣の作品や生涯についていろいろと活発に語られていた。『阿片戦争』や『小説十八史略』などは中国などでもよく読まれていたという。陳舜臣の言論がそれなりに「愛国的」であったことも、中国のメディアにとっては取り上げやすい一因だったに違いない。

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