世界的な取引所再編にとり残されじとようやく一歩を踏み出したが、課題は山積。さてこの男に成し得るのか。「どうして東京特派員ばかりが取材するのだ」「メイン担当はニューヨークだぞ」「いや、ロンドンにかませろ」 米ウォールストリート・ジャーナル、英フィナンシャル・タイムズ、独ヴィエルトシャフト、仏レゼコー。ここ数カ月、欧米の主要経済メディアでは、ある日本人への「取材権」をめぐり記者同士のさや当てが繰り広げられている。東京証券取引所社長の西室泰三(七一)だ。 東証はこの一月末に米ニューヨーク証券取引所や電子証券取引所アーキペラゴを運営するNYSEグループとの業務提携を決めたばかり。他の取引所との包括的提携は初めてだが、その余韻も醒めやらぬうちに、今度は米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と英ロンドン証券取引所(LSE)を相手に提携交渉に入っている。 再編が進む世界の証券取引所を見渡せば、米新興市場ナスダックを経営するナスダック・ストック・マーケッツがLSEにTOB(株式の公開買い付け)をかけ、NYSEは欧州取引所連合ユーロネクストとの合併を決めた。残された合従連衡の地はアジアしかない。「ニューヨーク、ロンドンと並ぶ三大市場」に数えられる東証は、今年になってから海外展開の遅れを一気に取り戻そうとするかのように動きはじめた。提携交渉の切り込み隊長はトップの西室。主要経済メディアの記者たちは遅れて登場したプレーヤーに群がった。

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