不正にお目こぼしをすれば会計士失格。強い風当たりに、ようやく監査の名に値する監査が行なわれる時代になったが――。 三月期決算を乗り越えられない企業が続出する――。監査法人業界で、そんな異常事態の到来が半ば公然と語られるようになってきた。監査法人に対する当局や社会一般の目が厳しさを増し、批判にたまりかねた監査法人が、猛烈な勢いで監査の“厳格化”に乗り出したからだ。監査法人発の信用不安が現実のものになりつつある。「先生のご担当は大丈夫ですか」「いや一社あってね」 最近、会計士が顔を合わすとそんな会話が挨拶代わりになっている。言うまでもなく、監査法人は企業がまとめた決算書が正しいかどうか、「監査意見」としてお墨付きを与えるのが仕事だ。かつてはほとんどの企業で、すべての重要な点について適正に表示していると認める「無限定適正」という太鼓判が押され、半ば儀式に近い機能しか果たしていない、と言われたものだ。それが今年は風景が一変しているという。 三月決算監査を占う前哨戦とも言える動きが、すでに始まっている。 東証二部上場の地理情報サービス会社アイ・エックス・アイ(IXI)が日本橋兜町の東京証券取引所内の記者クラブで深夜の会見を開いたのは一月十九日金曜日のことだった。営業部門の複数の取締役や社員によって不正な取引が行なわれていた可能性があるというのが内容で、同日付で営業担当の常務と取締役を解任、社員二人の懲戒解雇もあわせて発表した。

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