ロシアのあからさまな「天然ガス版OPEC」策謀

執筆者:内藤泰朗2007年3月号

[モスクワ発]世界最大の天然ガス産出国ロシアが、天然ガス版OPEC(石油輸出国機構)ともいえるカルテル組織の形成に動き始めた。 プーチン大統領は二月十一日から三日間、ソ連時代も通じてロシアの指導者としては初めて、世界のエネルギー供給源であるペルシャ湾岸のサウジアラビア、カタールなどを訪問し、この天然ガス版OPEC構想を含むエネルギー協力などについて協議した。これは、ロシアの強気のエネルギー外交が、米国の中東政策の要であるペルシャ湾岸にまで及んだことを意味する。「天然ガス版OPECの考えは興味深い」。プーチン氏は二月一日、年次記者会見でこう述べ、構想を念頭に置いていることを隠そうともしなかった。大統領はさらに、現段階でカルテルを形成する意図はないとしながらも、天然ガス産出を調整する国際的組織の必要性は口にした。 ガス版OPEC構想は、ロシアの指導部が昨秋に提唱し、広がった。ロシアに加え、イランやアルジェリアなど中東・中央アジア諸国を集めれば、実に世界のガス埋蔵量の七割超に達する。これらの国々をまとめることができれば、世界最大のガス埋蔵量を持ち、国連安全保障理事会常任理事国であり核保有国でもあるロシアが主導的立場に就くのは自然の流れ。そうなれば、世界の天然ガス市場を牛耳ることができる。プーチン氏が関心を持たないわけがない。

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