「経済パワー激落」で外交パワーも喪う日本

執筆者:小田博利2007年3月号

防衛相が呆けた発言をしているうちに足もとの梯子は消えていた。このまま在来型の経済政策をダラダラと続けていると日本は――。「亭主共を尻に敷くのも昔のままである。家の内に間男を連れ込むのも昔のままである。独りで美味いものを買喰するのも昔のままである。好んで生の葡萄酒を呷るのも昔のままである。かの一儀を行って歓ぶのも昔のままである」「金策にかけて最も巧みなのは女であり、政務を執っても決して欺かれることはなかろう。彼女等自身人を欺くのはお手の内だから」――。アリストパーネスの古代ギリシャ喜劇『女の議会』(村川堅太郎訳)は人間の真理を軽やかに描き出し、二千年以上の隔たりなど感じさせない。 女性を「子を産む機械」と発言した柳沢伯夫厚生労働相を吊るし上げた日本の女性議員たちによる「女の議会」と、古代ギリシャの風刺喜劇。どちらを好むかは、読者の判断にお任せしよう。 村川訳の『女の議会』は岩波文庫による。同文庫には一九三二(昭和七)年刊の別の翻訳書がある。題して『人間機械論』。著者はブルボン王朝下の十八世紀フランスの啓蒙思想家、ド・ラ・メトリ(一七〇九―五一)である。フランス唯物論の尖鋭な代表者だ。文庫の口上には、宗教界に激しい憎悪の嵐をまきおこし、各宗派は「一人の哲学者を迫害するために力をあわせて狂奔した」とある。

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