二月五日夜、日本航空社長の西松遥(五九)は民放各社の報道番組を行脚していた。瀕死のJALの浮沈をかけた中期経営計画「再生中期プラン」の発表を翌日に控え、世間へのアピールを狙ったのか。チャンネルを変えながら西松の“決意”に耳を傾けていた日航の元幹部は「過剰演出に見えるが、世論を味方につけないとならないくらい社内の抵抗が激しいのさ」と漏らした。 西松は昨年六月にお家騒動の後始末で社長に選ばれた。社内基盤が強いわけでもない財務の専門家にリーダーシップを求めるのは所詮無理なのかもしれないが、それにしても六日に発表された計画は期待外れだった。社用車や役員室を廃止しても焼け石に水。“とっておきの秘策”が社長自らの六〇%給与カット(一年間)ではお話にならない。 日航は資金をつなぐことに汲々としている。今後四年間で約七千五百億円の機体更新費用が見込まれるにもかかわらず、手元資金は二〇〇六年九月中間期で約三千億円。さらに同年三月期決算で長期借入金残高は八千億円を超えており、おのずと銀行からの融資に頼らざるを得ない。 当面の課題は社債の償還のために必要となる資金である。総額は二千二百七十億円。七回の償還日の中で最も額が大きくなる可能性があるのは、新株予約権付社債の期限前償還(最高で一千億円)を認めている三月二十五日だ。今回、銀行団が六百億円の追加融資に応じたことで当面の危機は乗り切れそうだが、同じ三月にもうひとつ大きな関門がある。労使間でリストラ交渉が始まるのだ。

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