人生と同様、政権にもここを乗り切れるかどうかが運命の分かれ目という難所がある。戦後有数の長期政権を築いた中曽根康弘元首相や小泉純一郎前首相にしても、足を踏み外せば一巻の終わりという政権の難所を経験している。 中曽根氏でいえば、首相就任一年後に挑んだ一九八三年十二月の衆議院解散・総選挙がそれだ。政権の後ろ盾だった田中角栄元首相に対するロッキード事件有罪判決がたたり、自民党は過半数割れ。窮地に陥った中曽根氏は、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する」との異例の声明を発表。新自由クラブとの連立交渉をまとめ、修羅場を切り抜けた。 小泉氏も就任十カ月足らずで支持率が半減する非常事態に見舞われている。内実は散々ながら人気だけは抜群だった当時の田中真紀子外相を更迭したことで、八〇%近くあった記録的な支持率は、調査によっては三〇%台まで急落。歴代随一の人気首相といわれた小泉氏もこの後、二〇〇二年九月の電撃訪朝でV字回復を果たすまでの八カ月間、支持率低迷に苦しむことになった。 就任五カ月を迎えた安倍晋三首相も、いま、その難所に差し掛かっている。高飛車な内閣改造進言 安倍首相―塩崎恭久官房長官コンビが送り込んだ本間正明政府税制調査会長が昨年十二月二十一日、公務員官舎で愛人と同棲していた問題で辞任。その六日後には、佐田玄一郎行政改革担当相が政治資金収支報告書に虚偽の事務所経費を記載していた疑惑で引責辞任した。年明けには松岡利勝農林水産相や伊吹文明文部科学相の政治団体の事務所経費にも不明朗な支出があったことが発覚する。予算委員会審議を前に内閣支持率は続落し、一月二十、二十一両日実施の朝日新聞調査では三九%と、ついに大台を割った。

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