ポロニウムアリマス

執筆者:名越健郎2007年3月号

 ロシアの反体制派、リトビネンコ連邦保安局(FSB)元中佐がロンドンで放射性物質「ポロニウム210」によって殺害された事件は、英捜査当局がFSBの元同僚ルゴボイを容疑者としたことで、FSB関与説が一段と強まった。 ルゴボイは昨年11月、ホテルのバーでリトビネンコ氏と会い、紅茶にポロニウムを混ぜて飲ませた疑い。元同僚のコフトンがポロニウムをロシアから持ち込み、「ウラジスラフ」という謎のロシア人が関与したと英メディアが報じている。プーチン大統領らKGB(旧ソ連国家保安委員会)の元中堅将校が中枢を固めるKGB政権の闇が、事件解明で暴露されかねない。 政権の統制下にあるロシアのメディアは、「リトビネンコの自作自演」「政商・ベレゾフスキーの犯行」といった政権べったりの主張を伝えているが、ロシアのアネクドート・サイトは一味違う勇気ある「分析」を伝えている。 問 リトビネンコはなぜロンドンで毒殺されたか? 答 ロシアでは、死刑の執行が凍結されているからだ。 昨年11月、ホテルのバーで、ルゴボイがリトビネンコに紅茶を渡しながら言った。「砂糖はいくつ?」「一さじだ。甘いのが嫌いなので、かきまぜないでくれ」

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