世界一の年金基金を動かす静かなノルウェー人

執筆者:ピーター・ウィルソン2007年4月号

ノルウェーが作りあげた、世界で最も戦略的に運用される年金基金。石油収入を後代にリレーする役割を担うのは、ひとりの静かな男だった。[オスロ発]クヌット・ヒャールが金融の世界を支配する超大物のひとりであることは間違いない。だが、オスロの静かな一角にある地味な四階建てのオフィスで仕事をこなす彼は、平凡なスーツに身を包み、物腰も穏やかで、どこかの役所の中堅の給与計算担当者のように見える。 給料はウォールストリートやシティーのスター・バンカーが得ている報酬の二十分の一にも満たない。週末は家族と一緒に小さなヨットで過ごす程度で、自宅の車庫に収まっているのは、九年落ちのスウェーデン車サーブと、趣味で集めた古いビール缶のコレクション。 地元オスロ大学と米ハーバード・ビジネス・スクールで政治と経営を学び、大学教授やシンクタンク役員、銀行会長、オスロ証券取引所副会長などを歴任した金融のプロながら、国内では決して有名人ではない。 ところが国際金融の舞台に出れば、彼は最も影響力のある人々に列せられる。五十歳のヒャールは二千八百九十四億ドル(三十三兆八千億円)という世界最大の資産を持つノルウェー政府年金基金の事務局長であり、運用責任者なのだ。

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