中東の過激派組織「イスラム国」による人質事件は、邦人2人とヨルダン人パイロットの殺害映像がインターネットで公開されるという衝撃的な展開となった。日本政府の人質救出に向けての努力を評価するかどうかは別として、結果的に安倍政権は人質を救うことはできなかった。ただ、この問題を日本国内の政局的な視点だけからとらえると、安倍政権にとって事件は決して不利には働かなかった。

 

上昇した内閣支持率

 後藤健二さんやヨルダン人パイロットの殺害映像が公開された後の2月12日、国会では衆参両院の本会議で政府4演説が行われた。安倍晋三首相の施政方針演説が終わり、続いて岸田文雄外相が外交演説の冒頭で、「イスラム国」事件に言及すると、野党席からヤジが飛んだ。

「外交の失敗だろ」

 事件に関して、様々な見方があるのは事実だ。国内外で「イスラム国」の暴挙に対する非難が高まっている半面、一部の識者やマスコミは、安倍首相がこの事件と重なる時期の1月16日から21日まで中東4カ国を訪問した際に、イラクなどに「イスラム国」対策として財政支援を行うことを表明したことが事件の引き金になったと指摘している。衆院本会議でのヤジは、こうした観点から安倍首相の責任を問おうとしたものである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。