IT業界を揺るがした十日間

執筆者:2007年4月号

一月末から二月にかけて、アメリカではマイクロソフト時代の終わりを告げる出来事が立て続けに起こっていた。 一月二十九日、ニューヨークの中心街マンハッタンにある高級イタリア料理店「チプリアーニ」。昼近くになってもいっこうにやまない冷たい風から逃れるように、大勢の人々が回転扉をくぐっていく。店内は、五年ぶりの全面改良となる新型OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」の一般発売を記念し、マイクロソフトが世界中から業界関係者を招いたイベント会場だった。「ユーザーだけでなく、ハード、ソフト会社にとってもエキサイティングな日」。スーツ姿のCEO(最高経営責任者)、スティーブ・バルマーはいつもの調子でまくしたてた。この日、バルマーとともに舞台に上ったパソコン業界からのゲストは五人。そのうちCEOの肩書きを持つのは、AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)のヘクター・ルイズ、デルのケビン・ロリンズの二人だけだった。 ビスタの一つ前のOS「ウィンドウズXP」を発売した二〇〇一年十月にも、マイクロソフトはニューヨークでイベントを開いた。同時テロの翌月だったにもかかわらず、インテルのクレイグ・バレットやヒューレット・パッカード(HP)のカーリー・フィオリーナら各社のCEOがマイクロソフト創業者のビル・ゲイツを笑顔で囲んだ。発売を翌日に控えたビスタのイベントに当時の華やかさはなかった。

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