そのモーリシャスから北に目を移すと、赤道の南、アフリカ東岸から千キロ余の位置に、インド洋の宝石と呼ばれる島国セーシェルがある。中国がここに軍事基地建設を企んでいるのではないか、との見方がある。 セーシェルは非同盟外交を建前とするが、ここ数年は中国との関係が緊密化。アフリカ駐在の西側外交筋が特に注目するのは今年二月上旬の胡錦濤・中国国家主席の公式訪問だ。胡主席はセーシェル最大の島、マヘ島にある首都ビクトリアで、ミッシェル同国大統領との間で経済協力協定などに調印、中国のプレゼンスを一層拡大した。 同筋によれば、経済協力のほかに何らかの軍事的取り決めが結ばれた可能性があるという。在ビクトリアの中国大使館は、各国公館の中で建物の規模や人員ともに最大。中国の武官や軍事技術者の姿も目立つようになったとの情報もある。 中東・アフリカ軍事筋は「セーシェルはインド洋とアフリカを結ぶ戦略的に重要な位置にある。米英が軍事拠点とするディエゴガルシア島とアフリカ東岸のちょうど中間にあり、インド洋に軍事基地をもちたい中国にとっては最適」と指摘する。 中国の動きには米国も神経を尖らせており、モーリシャス駐在の米大使(セーシェル大使を兼任)と「アフリカの角」地域担当米軍司令官の二人が最近ビクトリアを訪問した。前出の外交筋は「胡主席訪問の真の狙いを探るため」とみている。米国はクリントン政権時代の九〇年代末、在セーシェル大使館を閉鎖している。

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