1月7日に起きたフランスの連続テロは、何より言論機関が襲撃の対象となった点で、大きな衝撃を持って受け止められた。日本ではその後、過激派組織「イスラム国」による日本人の人質殺害事件にニュースの焦点が移ってしまった感があるが、地元フランスでは現在も議論と検証が続いている。事件を起こした容疑者らの生い立ちも、次第に明らかになってきた。

 容疑者らは、イスラム過激派や原理主義との接点を最初から持っていたわけではない。宗教とは縁遠い少年時代を過ごし、次第に過激思想に絡め取られていった。その過程を探ることで、テロリストが誕生するメカニズムを明らかにできないだろうか。

 現地の報道をもとに、容疑者らの軌跡を追った。

 

のどかな村の孤児院

 フランス中部のリムーザン地方コレーズ県は、国内でも最も地味な県の1つだろう。森と湖に囲まれ、自然は豊かだが、どこまで行っても山ばかり。これといった産業もなく、著名な観光地や史跡、記念物にも乏しい。外国人観光客の姿など、まず見かけない。

 それでも、この県名をほとんどのフランス人が知っているのは、シラク元大統領、オランド現大統領の地元であるからだ。シラクはパリの出身だが、先祖がこの地方と関係があり、総選挙に立候補する際にここを選挙区として選んだ。県内のサラン村にある城館を購入して居と定めた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。