「株高は官製相場だから」は正しいか

執筆者:青柳尚志2015年2月27日

 追い剝ぎが旅人を攫(さら)って、自分のベッドに寝かせる。背丈が足りなければ無理やり引き伸ばし、高すぎればちょん切ってしまう。「イスラム国」のやり口ではない。ギリシャ神話の「プロクルステスのベッド」に出てくる強盗、プロクルステスの所業である。2月に入り上げ足を速める日本株に対してよく耳にする批評は、これとよく似た無理筋の理屈ではないか。

 日経平均株価は1万8000円台に乗せ、2007年7月に第1次安倍政権でつけた高値を突破した。ITバブル華やかなりし2000年春以来15年ぶりの高値というのは、ちとおこがましい。それにしても、株価が上がり始めたのは結構なことだ。ところが、アベノミクスを快く思わない夕刊紙や一部のネットメディアは不満でならないらしい。

 昨年秋に景気が失速しかけ株価が不安定な時には、「株式市場も見限った安倍政権」などと言っていたことなどコロリと忘れ、「不自然な株高は官製相場」などと言い募る向きが多い。自分たちの気分次第で株式相場がイイ者になったり、ワル者になったりする。まさに「プロクルステスのベッド」である。なぜ株価は上がっているのか。

 

上向いた景気

 最大の理由は景気が持ち直し、企業業績が好転しているからである。「国民の大半は景気回復の実感を抱いていない」といった紋切り型の批評を繰り出す前に、景気指標を確認してみよう。例えば昨年10~12月の経済成長率。実質国内総生産(GDP)は前期比年率2.2%と、2四半期連続のマイナス成長からプラスに転じたものの、今ひとつパッとしない。

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