曽野綾子氏の産經新聞コラム「労働力不足と移民」(2015年2月11日)が論議を呼んでいる。アパルトヘイト(人種隔離)を擁護する表現があったとして、南アフリカ政府も大使館を通じて抗議した。

 私はフォーサイト誌で「2010年の開国 外国人労働者の現実と未来」の連載を始めた2007年以来、外国人が働く現場を回り続けてきた。「移民」や「外国人労働者」といったテーマは、なかなか身近な問題とは考えにくい。とはいえ、欧米諸国を見ても、やがては国論を二分する問題になることは間違いない。そんな思いから、本サイトでも引き続き同じテーマを追っている。

 曽野氏にはまず、議論のきっかけをつくってくれたことに感謝したい。アパルトヘイトの擁護問題に関しては、彼女の意見がどうであれ、人種隔離政策が日本で実現するはずもない。それよりも私が気になったのは、外国人労働者に対する曽野氏の根本的な「勘違い」だ。

 コラムを読む限り、曽野氏は「国を開けば、いくらでも外国人は日本にやってくる」との前提で話を進めている。その前提は曽野氏に限らず、移民の受け入れ賛成派、反対派ともに共通する。だが、それは大きな思い違いだ。この連載でも繰り返し述べてきたように、アジア諸国の若者にとって日本は、もはや「夢の国」ではないのである。

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