NATOとの協力は必要だが油断禁物

執筆者:佐瀬昌盛2007年4月号

安倍首相はNATO本部で協力を謳った。だが自衛隊の海外任務で犠牲者が出れば世論は急変しかねない。覚悟と準備あってのことなのか。 遥けくも来にし道かな。 訪欧中の安倍晋三首相が一月十二日、北大西洋理事会(NAC、いわゆるNATO=北大西洋条約機構=理事会)に日本の指導者として初登場、初演説したとき、筆者が抱いた感慨だ。首相はまず、「日本は、国際社会のためになすべきことを実行する用意がある」と切り出し、「日本とNATOはパートナー」で、「紛争に際して平和の定着を目指し、これまで以上に互いに持てる能力を発揮し共に行動する必要があります」と語った。明快なメッセージである。 なぜ「遥けくも」なのか。私事で恐縮だが、筆者は「壁」出現時(一九六一)の西ベルリンに留学した。そこで勉強できたのは、西ベルリンに米英仏の三国軍がおり、二百キロ西方の西ドイツがNATOの懐に抱かれていたからだ。当然、NATOに目が開き、帰国後にNATO研究にもいそしんだ。すると、研究者の間で要注意人物視された。当時の知識層には、日米安保とNATOを「米帝」の戦争手段とみる空気が濃厚だったからだ。政治はそういった空気に怯んでいた。

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