金融界の巨人がしゃにむに買収に動いた裏には、日本での「空白」を埋めざるをえない米本社サイドの事情があった。「金融庁が漏らしたのか!」 二月二十三日夜、東京のベイエリアに高くそびえるシティグループセンタービル。「日興がシティグループに支援要請」とのニュースが流れると、シティグループ・ジャパンのダグラス・ピーターソン最高経営責任者(CEO)ら米国人幹部たちは顔を真っ赤にして怒った。 ちょうどその頃、山本有二金融担当大臣は記者団の夜回りを受けていた。「あいつら(シティグループ)、日興が上場廃止になったら株式を一〇〇%買ってもいいって」。 米シティグループは世界最大の総合金融機関だ。百カ国以上に支店を展開し、従業員は三十万人。銀行、証券、保険の三大金融商品を一手に取り扱う。顧客口座数は二億を超え、総資産は一兆八千八百億ドル(約二百二十兆円)もある。 シティは、粉飾決算で経営難に陥った日興コーディアルグループを買収しようと昨年から交渉を続けてきた。報道が流れた当時は、みずほフィナンシャルグループ(FG)に加えて、JPモルガン・チェース、メリルリンチなど米国のライバルも日興に関心を示しており、手の内はさらしたくなかった。ピーターソンCEOと米国人スタッフは滞日三年目を迎える今年の夏をメドに米国本社へ「凱旋帰国」を予定している。彼らには買収案件をものにしなければならない事情があった。

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