昨年10月にインドネシアの大統領に就任したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)が間もなく初来日する。昨年8月に当選が決まって以来、日本側は何度も早期の訪日を要請してきたが、政権発足後5カ月たってそれがようやく実現する格好だ。

 今回の来日で議題にあげられるテーマは、まだ政府内で調整が続けられていて明らかにされていない。まずはジョコウィ政権の全体的な外交方針を確認しながら、今後の日本とインドネシアの関係を考えてみたい。

 

ユドヨノ外交の否定

 インドネシアは独立以来、外交力の高い国である。たとえば1955年のアジア・アフリカ会議は、初代大統領スカルノが主導してインドネシアのバンドゥンで開催された。第2代スハルト大統領は、1967年に発足したASEAN(東南アジア諸国連合)の事務局をジャカルタに誘致するなど、域内最大国としてASEANの地域協力を主導し、インドネシアを「ASEANの盟主」の地位に向上させた。

 しかし、アジア通貨危機にともない国内の政治経済情勢が不安定化すると、インドネシアはその外交力を大きく低下させることになった。その国際的地位の低下を再び回復させたのが、2004年から10年間政権を担ったスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領であった。ユドヨノは、インドネシアを「世界最大のムスリム(イスラーム教徒)人口を抱える民主主義国家」と再定義することで先進国の評価を勝ち取るとともに、全方位外交を展開して世界にインドネシアの存在感を示そうとした。ユドヨノは,そのような自らの外交を“One thousand friends, Zero enemy”と名付けた。ユドヨノによるこの全方位外交は成果をあげ、ASEAN内での自国の地位を回復させることに成功するとともに、東南アジアから唯一G20(主要20カ国・地域)入りした。

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