バグダッドの在イラク日本大使館が今年一月から二月にかけて、米軍の厳重な管理下にある「グリーンゾーン」内へ極秘裏に移転していたことが分かった。それまで大使館はグリーンゾーン周辺の区域「インターナショナルゾーン」にあったが、武装勢力の迫撃砲、自動車爆弾による攻撃の危険が高まっていたため、昨年から移転の準備を進めていたという。 旧大使館は二〇〇三年四月のバグダッド陥落後、しばらく米軍が使い、同年五月から日本人職員が戻って業務を再開していたが、建物の傷みが激しい上、インターネットなど通信設備も老朽化が目立ち、大使館側から設備更新の要望が出ていた。 新しい日本大使館は米国大使館に近く、周囲には多数の米軍部隊が待機する。コンクリート壁で囲まれた厳戒態勢のグリーンゾーン内でも「最も安全な場所」になった。警備は英国の警備会社に委託。元英特殊部隊員ら各国精鋭部隊出身の警備員が二十四時間態勢で警備する。 しかし、バグダッド市内の治安悪化が再三指摘されながら、なぜ今までグリーンゾーンに移転しなかったのか。元米政府当局者は「日本は中東やイラクで印象が悪くない、敵視されにくいとの誤解が認識の甘さにつながった」と指摘する。

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