アフリカ大陸西側のギニア湾に浮かぶ赤道直下の島国サントメ・プリンシペをめぐり、米中が水面下で熾烈な争いを繰り広げている。 サントメ・プリンシペは大阪府の半分ほどの面積に約十六万人が住むに過ぎない小国だが、ナイジェリアからアンゴラに至るギニア湾産油地帯の中心に位置する。米国は現在、ギニア湾岸諸国に石油輸入の約一五%を依存するが、二〇二五年には依存率が二五%まで上昇する可能性があり、アフリカ大陸西岸の安全保障の要衝として、この小国に着目したのだ。 外交筋によると、米軍は昨年末からサントメ・プリンシペにギニア湾全域を監視するレーダー基地の建設を始めた。今年三月初旬には海兵隊員二百人を派遣し、サントメ・プリンシペ沿岸警備隊と共同軍事演習を行なった。ギニア湾岸の緊急事態に備え、米軍が装備などを島内に事前配置する計画もあるという。 一方、米国の「進出」に危機感を抱いた中国は、台湾と外交関係を持つサントメ・プリンシペに対し、台湾と断交するようギニア湾周辺国を通じた説得に乗り出した。アフリカには現在、サントメ・プリンシペを含め台湾と国交を持つ国が五カ国あるが、中国が外交関係を結び、経済援助などを通じて米国に対抗しようとの思惑だ。さらにサントメ・プリンシペがナイジェリアと共同で開発している原油採掘鉱区にも中国企業を参入させ、石油開発を通じたプレゼンス強化も狙っている。

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