中央アジアの優等生「カザフスタン」の憂鬱

執筆者:名越健郎2015年4月2日

 資源開発の成功で中進国入りした中央アジア・カザフスタンで4月26日、大統領選が予定を早めて実施される。ソ連時代の1989年以来最高指導者の地位にあるナザルバエフ大統領の信任投票であり、同大統領の当選は確実。繰り上げ大統領選の背景には、事実上の同盟国・ロシアとの複雑怪奇な関係が影響している。3月に首都アスタナと南部のアルマトイを訪れ、中露に挟まれたカザフ外交の舵取りを探った。

 

プーチンの不規則発言

 建設が進む新首都アスタナ。アスタナは「世界で最も寒い首都」と言われる(写真はすべて筆者撮影)
建設が進む新首都アスタナ。アスタナは「世界で最も寒い首都」と言われる(写真はすべて筆者撮影)

 関税同盟を結ぶロシア、カザフ、ベラルーシ3国は1月、農工業など主要部門で協調政策を取る「ユーラシア経済同盟」を発足させ、アルメニアも加わった。ロシアは旧ソ連圏の経済統合をさらに推進する構えだが、昨年3月のロシアによるウクライナ領クリミア併合や東部での親露派支援が、ロシア・カザフ関係に微妙な影を落としている。カザフは公然と表明しないものの、ロシアのウクライナ干渉に批判的なのだ。

 昨年3月、国連総会に上程されたウクライナの領土保全を求める決議案に対し、ベラルーシやアルメニアは反対したが、カザフは中国と同様、棄権に回った。カザフ居住のロシア系住民は約23%。カザフ北部ではロシア系住民が多数派で、ロシア語地名も多いことから、ロシアの極右指導者、ジリノフスキー自民党党首はカザフ北部を「ロシア固有の領土」と呼んだことがある。ウクライナ介入により、ロシアが将来、カザフ北部の親露派をたきつけて分離独立を図る理論的可能性が生じた。

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