知らぬまに沸き立っていたロシアの「日本ブーム」

執筆者:ユーリア・ストノギナ2007年5月号

桜と梅で風味づけし、ラベルに俳句を刷り込んだ紅茶が売れに売れる――ロシア人はいつしか日本ブランドの虜になっていた。[モスクワ発]旧ソ連時代、「日本」という言葉も「ブランド」という言葉もソ連人には謎めいていた。しかし、時代は変わり、高度成長に伴う消費社会に入ったロシアで、「日本」はクルマから食品、電気製品、ファッションまで、消費者が最も渇望しているブランドとなった。多くのロシア人にとって、日本はいまや日常の一部と言っていい。 かつて禁断の果実だった「日本」と「ブランド」が結合し、強力な磁力を放っていることを日本人はまだ知らない。平和条約がなくても、「日本ブランド」はロシアで他の国家ブランドを圧倒し、年々人気を高めている。 日本ブランドは現在、ロシアの巨大な空間に多面的に浸透しており、その一つが文化面だ。日本の文学、映画、陶器はソ連時代からある範囲のロシア人を魅了してきたが、ソ連当局は生け花や根付、能・狂言や、ソ連式イデオロギーに矛盾しない作家などを限定的に容認しただけだった。黒澤明や栗原小巻が日本映画の代表だった。しかし今日、北野武や宮崎駿、三池崇史らが彼らに取って代わった。文学でも、村上春樹、よしもとばなな、山田詠美、島田雅彦らがすっかりロシアの読者におなじみの作家だ。

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