フランスに本拠地を置く世界最大の高級ブランド企業、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノー会長が、世界第二位の小売業カルフール(仏)の大株主に躍り出た。自身の持ち株会社、グループ・アルノーが、投資ファンドのコロニー・キャピタルと組んで、三月半ばにカルフールの株式の九・一%を取得し、最大株主のアレー家(一三%)に次ぐ株主になった。 アルノー氏は「潜在成長力がありながら過小評価されている企業への長期投資」と述べている。だが、二〇〇八年六月まで二〇%以上の株式を保有しない代わりに、監査役会に二人を送り込むことを認めさせるなど、早くも経営に影響力を行使している。カルフールが、二百億ユーロ(約三兆二千億円)とも評価されている不動産の一部を売却するとの観測が浮上しているのも、新しい株主の圧力を受けたものといえる。 アルノー氏は、LVMHという売上高が二兆五千億円近い企業のトップだが、「カシミアをまとった狼」の異名を取るように、「買収家」という顔を持つ。ここ数年でも、イタリアの有名皮革ブランドのグッチを傘下に収めようと株を買い増したが断念した過去がある。 そもそも現在のLVMHに至るまで、一九八四年に国営繊維企業ブサック社の買収で「クリスチャン・ディオール」を手に入れ、八八年には経営陣の内部対立を機にLVMHの株主となり、最終的に経営権を握るなど、企業が弱ったところに乗じた買収・合併を繰り返している。経営者でありながら、企業に投資して収益が上がるのを狙う投資ファンド的な性格も合わせ持っている。

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