胡錦濤は「妥協と平衡」で何を目ざすのか

執筆者:藤田洋毅2007年5月号

江沢民派や太子党に譲歩したかのような一連の人事。だが、その陰には五年後への布石が――。「和諧(調和のとれた)社会の建設を訴えている胡さんですよ。中南海にも調和が不可欠というわけですね」――中国国務院の中堅幹部がニヤリと笑う。三月に発表された上海・天津の二直轄市と山東・陝西など四省のトップである党委員会書記人事は、胡錦濤総書記の統治手法を如実に示している、カギは「妥協と平衡(バランス)」だと続けた。 最大の権力基盤である共産主義青年団(共青団)グループ(=団派)に偏らず、建国の元勲の子弟らからなる太子党にも配慮し、「平衡」を図る。同時に、依然露骨に影響力を誇示する江沢民前総書記派とも「妥協」したのだ。その狙いは、今秋の第十七回党大会に向けた権力基盤固めにとどまらない。二〇一二年に予定する十八回党大会で後継となる第五世代を確立する下地作りも兼ねているという。 三月二十四日午後、賀国強党中央組織部長の「真剣に比選(比較選考)し、繰り返し練り直し、慎重に考慮して決定した」と宣言する声が、上海展覧センター三階に響いた。上海市党委拡大会議を招集し、浙江省書記の習近平を上海のトップに据える党中央の決定を伝えたのだ。昨年九月に失脚した陳良宇書記の後任には、劉延東党中央統一戦線工作部長(女性)、李源潮江蘇省書記という二人の団派ホープの起用が取りざたされていただけに、賀部長の発言は意味深だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。