安倍首相は四月二十六、二十七日の訪米の後、二十八日から五月二日にかけて湾岸諸国とエジプトを歴訪した。五日間をかけ、百七十人を超える財界使節団を随行させて、湾岸協力会議(GCC)六カ国のうち四カ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール)とエジプトを巡った今回の訪問は、それ自体で何か大きな変化をもたらすような、目覚しい成果を挙げたわけではない。しかし今後の動き次第では、日本が中東に積極的に関与する重要なステップとして評価されることになるかもしれない。あくまでも今後の更なる努力次第、という点は強調される必要があるが、せっかくの萌芽的な努力を、一概に退けてしまってはならないだろう。 中東の場合、政治外交であれ経済関係であれ、要所でトップが出て行くことは極めて重要である。アラブ首長国連邦とカタールには一九七八年の福田赳夫首相以来初の首相訪問、クウェートは首相の初訪問であり、これまで軽視しすぎてきた。 政官のエリートが中東での経験を有し識見とコネクションを備えていることが稀でない欧米との乖離は、そう簡単に埋められない。日本と中東の間には特有の「食い合わせの悪さ」のようなものがあって、それが随所で関係を阻害してきたのかもしれない。意思決定や企業文化の違いや、そもそもの相互の社会が相手に求める根本的なニーズの食い違いから、関係は自ずと限定されてきた。

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