NTT「組織防衛人事」に高まる落胆の声

執筆者:桜田馨2007年6月号

三角合併解禁で、「国策企業」が“買収の危機”に晒され始めた。この会社の行方は、NTTグループ解体論にも影響を及ぼすとも――。「ネット覇権をめぐり、ヤフーとマイクロソフトが経営統合を考えるような時代に、内向きの組織論ばかりしていて良いのか。『二〇一〇年問題』で頭がいっぱいの上層部は、だからこそ『労務屋』トップが必要との理屈だろうが……」 NTTグループのトップである持株会社の次期社長に、下馬評通り、三浦惺副社長(六三)の昇格が内定した四月下旬、有力グループ会社の若手幹部は浮かぬ表情を見せた。 NTT内で「二〇一〇年」は特別な意味を持つ。竹中平蔵前総務相が昨年仕掛けたグループの経営体制見直しについて、是非を判断する政府・与党の議論が始まるからだ。成り行き次第では、持株会社を廃止し五つの子会社の資本関係をなくす「グループ解体」もありうる。 通信業界を牛耳るガリバーの解体を志向する竹中路線に抵抗してきた和田紀夫・現NTT社長(六六)からすれば、片山虎之助自民党参議院幹事長ら永田町の族議員や所管官庁である総務省の官僚に顔が利く“子飼い”の三浦氏への禅譲は既定路線。さらに、一九六九年入社組の「スリートップ」と称される、高部豊彦NTT東日本社長(六〇)、和才博美NTTコミュニケーションズ社長(六〇)、中村維夫NTTドコモ社長(六二)をそろって留任させ、「三浦氏の後のグループトップ就任というニンジンをぶらさげることで、三浦新体制の最大の役割であるグループ解体阻止への貢献度を競わせるようにした」(関係筋)。

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