世界的に根絶が近いとされてきたポリオ(小児麻痺、急性灰白髄炎)の感染者がミャンマー国内で相次いで見つかり、感染の拡大を阻止することが急務となっている。 世界保健機関(WHO)が感染を確認したのは、バングラデシュと国境を接するミャンマー西部のラカイン州だが、感染者数などは公表されていない。 ミャンマーでは二〇〇三年に「ポリオ完全撲滅」を宣言したものの、軍事政権が保健衛生政策を軽視したため、二〇〇六年四月に中部にある主要都市マンダレーで生後十九カ月の男の子のポリオ感染が確認されている。今回の感染は昨年に続くもので、ミャンマー軍政は官製新聞を通じて「ポリオウイルスをまだ完全に撲滅していない隣国を通じてウイルスが入ってきた」と強弁し、WHOが「ポリオをいまだ撲滅できていない国」として公式に名前を挙げるインドやパキスタンなどの周辺国を暗に非難した。 軍政は今回ポリオが確認された地域の五歳以下の子供にワクチンを優先的に回す一方、隣国のバングラデシュ政府、保健当局と協力してウイルスの根絶に乗り出すとしている。 しかし、国際的な人権擁護団体は、保健衛生への予算配分が乏しいうえに、国際赤十字などの国際援助機関の出先機関は「民主化など政治活動の温床」であるとして閉鎖命令を出す軍政の姿勢こそが問題、と厳しく指摘する。

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