早くも“ドミノ現象”を呼んだ米韓FTAの衝撃

執筆者:戸川秀人2007年6月号

四月二日の合意に背中を叩かれて、世界のFTA交渉が一気に動き出した。へたをすれば日本だけが置き去りに――。 まるで大型ホームランを連続して打ち放つ好調時の李承ヨプのようではないか。国内での支持率と国際的評価の低下が指摘されて久しい韓国の盧武鉉政権だが、今年に入ってからの通商政策の成果には目を見張るものがある。 四月二日には本格交渉から約十カ月で、米国との自由貿易協定(FTA)の締結で電撃的に合意。「まず合意は無理だろう」とタカを括っていた世界の通商関係者を、あっと言わせた。返す刀で、五月六日には欧州連合(EU)との交渉開始も決定。ソウルでの共同記者会見で正式に発表した後、早速、翌七日から市内のホテルに缶詰となり、実際の交渉作業に入った。驚くべきスピードと実行力である。 米国とEUの経済規模をごく大雑把に見ると、米国の人口は約三億人、国内総生産(GDP)は約十三兆ドル。今年一月に加盟国が二十七カ国に拡大したEUは約五億人、約十一兆ドルに達する。GDPが約八千億ドルの韓国にとっては、どちらも巨大な市場である。世界の二大市場とのFTAに突き進む盧武鉉政権の動きに、日本政府は慌てた。「米韓FTAは大した内容ではない。韓国のコメ市場も自由化から除外している。世界貿易機関(WTO)の基準も満たしていないはずだ」

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