医療機器市場が日米産業の隠れた闘いの場になっている。医療機器に関しては圧倒的に日本の輸入超過状態にあり、その背景にいびつな構造があるからだ。「医療安全保障」という耳慣れない言葉にも医療関係者の注目が高まっている。高齢化社会の訪れにより医療費が増加して保険制度が崩壊するといった話ではなく、ニーズが高まる高度医療用の機器の開発と販売の主導権がアメリカを中心とする外国メーカーにあり、高度医療の肝を他国に握られているというのである。 日本医療機器産業連合会によると、医療機器の国内出荷額は約二兆五四〇〇億円で、うちおよそ二割の約四三〇〇億円相当分が輸出され、アメリカ向けは約一一〇〇億円(二〇〇四年度)。それでいて国内出荷額の四割に相当する約九五五〇億円の輸入があり、その六割をアメリカが占めている。CT(コンピューターX線断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)など、一台で一億から数億円もする先端の検査機器のほとんどが、アメリカ企業に押さえられているからだ。 医療機器の価格差も大きい。武蔵野市医師会がインターネットに公開している情報では、例えば心臓用ペースメーカーの値段は日本では一六〇万円だが、アメリカでは六〇万円。一九九〇年代初頭の日米包括経済協議で、医療機器も政府調達協定の対象品目となり、いまだに高い機器を購入せざるを得ない状況が続いているためである。

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