「インドの民間航空は年率二〇%のペースで成長している。四年で二倍になると言うことだ」
 超大型旅客機A380のデモ飛行のため訪印した欧州エアバスのジョン・リーヒー最高執行責任者(COO)は五月上旬、記者団に対してインド市場への並々ならぬ熱意を示した。同社の予測によると、インドでは今後二十年で、千百機・千五十億ドル相当の航空機需要が見込まれる。実際、二〇〇五年以降だけでも、国営エア・インディア(AI)がボーイング777など六十八機・七十一億ドルの大型購入契約を結ぶなど、発注数は三百機近くに達している。
 一九九三年まではAIとインディアン航空(IA)の国営二社が独占していたインドの空には、規制緩和によって民間首位のジェットエアウェイズや格安航空最大手のエアデカンなど計十社が相次ぎ新規参入した。
 だが、「国内線で五年の経験がないと国際線に進出できない」という政府のルールが、各社の海外展開を阻む。先行するジェットなどは東南アジアや英国便を就航させたが、高収益の湾岸アラブ路線などは今も国営二社の独占だ。二周年を迎えたキングフィッシャー航空のビジャイ・マリヤ会長は、政府に規制緩和を働きかける一方、米国子会社をインド路線に就航させる「逆上陸」方式も検討している。
 活況を呈する航空業界だが、値引き競争に加え、燃料費高騰などで運航コストが上昇、利益なき消耗戦に突入している。ジェットは〇六年十二月までの九カ月に約六億ルピー(一ルピー=約二・九円)の赤字を計上。支線が多いエアデカンの場合は〇七年一―三月期だけで約二十一億ルピーの赤字に陥った。
 こうした中、民間に押されていたAIとIAが合併を正式決定。四月には、いったんは決裂したジェットと民間四位のエア・サハラの合併交渉も急転直下で合意に達した。赤字が続くエアデカンには、大手財閥リライアンスやキングフィッシャーなどが関心を示している。
 民間の参入による健全な競争で料金引き下げやサービス改善を実現し、乗客を増やしてきたインド航空業界に、早くも大きな試練が到来した。

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