安保情報流出の“死角”はまだある

執筆者:西村竜郎2007年6月号

日本政府を揺るがしたイージス艦の秘密情報流出事件。だが、大学・研究機関からの流出には、いまだ手が打たれていない。 防衛省・自衛隊で情報が外部に流出する事件が相次いでいる。だが、まだ表面化はしていないものの、安全保障に関連する流出問題は日本政府の別の場所にも潜んでいるのだ。これらの共通点は、政府の縦割り行政の弊害が情報保全に「死角」を生じさせているということだ。 中国籍の妻をもつ海上自衛隊の二等海曹がイージス艦の秘密情報を持ち出していた事件は、防衛省・自衛隊員の情報管理に関して大きな波紋を投げかけた。中国人の妻には今年四月に懲役一年の実刑判決が下りたが、事件をめぐっては、当初隊員の教育用に作成されたデータがパソコンを経由してどのように拡散していったのか、その流出ルートを軸に解明が進んでいる。 内外のインテリジェンス関係者がより大きな衝撃を受けたのは、自衛隊員に外国籍の配偶者をもつ者が海自だけで約百人(陸自、空自は未公表)おり、そのことに防衛省・自衛隊が十分な関心と警戒心をもっていなかったということだった。 事件が一般にも報じられるようになった四月。対応策を検討する防衛省内の会議で一人の高級幹部がつぶやいた。

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