中央アジアの資源大国カザフスタンでウランを確保し、胸をなでおろした日本。だがその直後には、ロシアがカザフと“盟約”を結んでいた。 四月末、日本から百人を超す財界人、ビジネスマンを乗せた日本航空のチャーター便がカザフスタンの首都アスタナに飛んだ。甘利明経済産業相のカザフ訪問に合わせた財界ミッションで、東京電力の勝俣恒久社長、関西電力の森詳介社長、中部電力の三田敏雄社長など電力業界幹部に加え、丸紅の勝俣宣夫社長ら大手商社トップも顔をそろえるエネルギー関係業界そろい踏みとなった。 目的はウラン資源の確保。ミッションはカザフスタンの国営原子力会社カザトムプロムと五件のウラン鉱山開発契約、十件のウラン購入契約などを結んだ。東電、中部電、丸紅の三社でつくるコンソーシアムはカザトムプロムのグループ会社であるハラサン鉱山に資本参加し、年間二千トンのウランを調達する契約を締結した。日本企業は関電、住友商事がすでにウエスト・ムインクドュック鉱山に資本参加しており、日本のウラン調達におけるカザフ傾斜は一気に深まった。 カザフは豪州に次ぐ世界第二位のウラン埋蔵国で、世界の五分の一のウラン資源がある。これまで日本をはじめ先進国は、供給安定性の面で豪州とカナダにウラン調達を大きく依存してきたが、最近になって状況が大きく変わった。中国、インドやその他の新興成長国の台頭で、石油、天然ガスの需給が逼迫、価格も高騰したことで、世界的に原子力への関心が高まっているからだ。原子力は一九七九年の米スリーマイル島原発事故、八六年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の後、日本や韓国、フランスなどを除けば世界的に新設が停滞。燃料であるウランの需要も横ばい状態が続き、価格も低位安定していた。ところが、エネルギー需要の増加とともに地球温暖化問題もクローズアップされるようになり、二酸化炭素を排出しない原子力発電が再び注目されるようになった。

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