一九九四年の米朝枠組み合意、二〇〇五年の六カ国協議共同声明、今年二月の共同文書――北朝鮮は約束を決して守らず、歴史は繰り返した。アメリカの判断に誤りはなかったのか、前米国次席代表に聞いた。 北朝鮮とは二国間対話をしないはずだった米ブッシュ政権が、今年一月のベルリンでの米朝首席代表会談を皮切りに、北朝鮮に対する姿勢を強硬路線から転換したかに見える。その引き金になったとされる大統領宛の「メモ」を作成したNSC(国家安全保障会議)日本・朝鮮部長で、六カ国協議次席代表を務めたビクター・チャ氏が、四月末、政権を離れてジョージタウン大学に復職した。六月十日、来日したチャ氏にアメリカの姿勢転換の真意を聞いた。原則は今も変わっていない――ブッシュ政権は対朝政策を変更したのですか。チャ そう見えるかもしれませんが、何も変わっていません。二〇〇二年十月に北朝鮮がケリー国務次官補に対し核開発を認めたことで、一九九四年の枠組み合意が破綻した。その時、ブッシュ政権は三つの原則を確認しました。CVID(核の完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄)を求めること、二国間交渉ではなく中国や韓国、日本などすべての関係国と協調して北朝鮮の核問題に取り組むこと、そして外交的手段によって解決すること。この原則は、今も全く変更されていません。

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