格差問題解決の本当の処方箋

執筆者:大竹文雄2007年7月号

地域や産業を特定した補助金政策などでは対策にならない。本当の意味で格差を是正するには、将来に目を向ける必要がある。 二〇〇六年の流行語大賞のトップテンに選ばれたほど「格差社会」は人々の関心を集めた。格差がこれほどまでに人々の関心を集めるのは、人々が他人との相対的な差から幸福を感じたり不幸を感じたりするからだろう。自分の幸福度の絶対的な水準は、誰しもなかなか分からないものだ。それに比べて、他人よりも所得が多いとか少ないということは分かりやすいので、それが幸福感や不満感につながりやすい。 小泉内閣が行なった構造改革に対する批判のためや統一地方選や参院選に向けてといった理由があったにしても、格差社会が政治的な論点になる背景には、日本人の間に格差感が高まっていたことがあげられる。実際、『国民生活選好度調査』(内閣府)によれば、「収入や財産の不平等が少ないこと」が「ほとんど満たされていない」と考える者の比率は、一九八〇年代から上昇しており、〇五年には四人に一人になっている。人口高齢化が大きな要因 格差感が高まっているからと言って、格差解消のための政策を行なうべきなのか、というとその前にチェックすべきことがある。なぜなら、感情に基づいて政策を行なうと、奇妙な所得再分配政策が行なわれてしまう可能性があるからだ。所得が下がったけれども絶対的な水準では高い所得を得ている人が強い格差感を感じていて、所得が上昇している低所得の人が格差感を感じていないケースもあるかもしれない。既得権をもって恵まれていた人が、既得権を失って大きな不満をもつことも多い。その際、極端な場合には、格差感をもっていない低所得の人から、格差感をもっている高所得の人への再分配が行なわれかねない。そういった奇妙な再分配政策を防ぐためにも、格差拡大の中身について、私たちはその真相を知ることが必要だ。

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