今なぜブラックストーンは上場するのか

執筆者:喜文康隆2007年7月号

「私は、資本主義を次のように、より限定的に定義します:資本主義とは、私的所有によって特徴づけられたすべてのシステムのうち、生産要素の新結合を実行し、信用創造を含むところの亜種である、と。私は、この特質を本質的な事柄と考えています」(J. A. シュンペーター『資本主義は生きのびるか』)     * 世界最大の投資ファンド、ブラックストーン・グループは五月下旬、年内にニューヨーク証券取引所に上場するとともに、中国から三十億ドル(約三千六百億円)の無議決権株取得による出資を会社本体に受け入れることを発表した。「極めて重大なパラダイムシフトであり、中国のさらなる市場開放の前兆となるよう期待している」(ダウ・ジョーンズ米国企業ニュース)――ブラックストーンの共同創業者スティーブ・シュワルツマンのコメントは、今回の決断がブラックストーンという会社の枠を超えて、米中両国の政治的な意図を反映したものであることを感じさせる。 しかし、決断が与える影響は、中国の経済政策だけに留まらない。投資ファンドが世界各地で展開するM&A(企業の合併・買収)の手法も変化させずにはおかないだろう。 ブラックストーン・グループは、一九八五年に、ニクソン政権の商務長官で、リーマン・ブラザーズ元会長のピーター・ピーターソンと、同じくリーマン・ブラザーズ出身のシュワルツマンが、わずか四十万ドルで起こした投資ファンドである。

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