五月三十一日、アップルが「iTunes U」というサービスを開始した。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、マサチューセッツ工科大学(MIT)など全米の大学の講義(音声、ビデオ)を無料配信するサービスである。ここ五年でアップルは、「iTunes」と「iPod」の組み合わせによって音楽に関するプラットフォームを押さえた。それと同じ仕組みを使って私たちは誰でも(その大学の学生でなくたって)、全米トップクラスの大学の授業を好きなだけ「iPod」にダウンロードして、いつでもどこでも音楽を聴くように講義を受けることができるのである。 百聞は一見にしかず。本誌読者はぜひ「iTunes U」にアクセスして体感してみてほしい。この講義ライブラリは今後五年から十年でどんどん充実していくに違いないのだが、それがどれほど素晴らしいことか、わくわくした気分になりませんか。 大学の講義内容をネット上で一般に無償公開するという考え方は、MITが「オープンコースウェア」という画期的な構想で、五年前に先鞭をつけた。MITは、その思想に共鳴したヒューレット財団などから大きな資金を調達してシステムを構築し、「すべての講義」を公開する作業が粛々と進行中だ。これはこれで意義あるプロジェクトなのであるが、その後の五年間で大きく変化したことが二つある。

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